疾病については、業務との間に相当因果関係が認められる場合(業務上疾病)に労災保険給付の対象となります。業務上疾病とは、労働者が事業主の支配下にある状態において発症した疾病のことを意味しているわけではなく、事業主の支配下にある状態において有害因子にさらされたことによって発症した疾病のことをいいます。
例えば、労働者が就業時間中に脳出血を発症したとしても、その発症原因に足り得る業務上の理由が認められない限り、業務と疾病との間には相当因果関係は成立しません。一方、就業時間外における発症であって、業務上の有害因子にさらされたことによって発症したものと認められれば業務と疾病との間に相当因果関係は成立し、業務上疾病と認められます。
一般的に、労働者に発症した疾病について、次の3要件が満たされる場合には,原則として業務上疾病と認めれられます。
1.労働の場に有害因子が存在していること
この場合の有害因子は、業務に内在する有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業態様、病原体等の諸因子を指します。
2.健康障害を起こしうるほどの有害因子にばく露したこと
健康障害は、有害因子へのばく露(さらされること)によって起こりますが、当該健康障害を起こすのに足りるばく露があったかどうかが重要です。このようなばく露の程度は、基本的には、ばく露の濃度等とばく露期間によって決まりますが、どのような形態でばく露を受けたかによっても左右されるので、これを含めたばく露条件の把握が必要となります。
3.発症の経過及び病態
業務上の疾病は、労働者が業務に内在する有害因子に接触し、又はこれが侵入することによって起こるものなので、少なくともその有害因子へのばく露後開始後に発症したものでなければならないことは当然です。しかし、業務上疾病の中には、有害因子へのばく露後、短期間で発症するものもあれば、相当長期間の潜伏期間を経て発症するものもあり、発症の時期はばく露した有害因子の性質、ばく露条件等によって異なります。したがって、発症の時期は、有害因子へのばく露中又はその直後のみに限定されるものではなく、有害因子の物質、ばく露条件等からみて医学的に妥当なものでなければなりません。 |